2000
#G009・背中合わせの二人
Aランチは既に売り切れ、恰幅のいい厨房のシェフは済まなそうに首を横に振った。「じゃ、じゃあ、Bランチで」
鶏肉はあまり好きではないが仕方がない。オスカ・ダブリンはチケットを持って席に着いた。
「今頃昼飯か」
ほとんど食べ尽くしたAランチのトレイを持って、同室のオムル・ハングがやってきた。
「遅いんだな」
「サブブリッジでオペレーターの補佐をやってたんだ」
「お前もか。俺も、ハンガーで整備のアシストをさせられてるんだ」
「ふーん、そうなんだ」
「おかしいよな、まだ訓練生の俺達に、そんな正規兵紛いのことさせるなんてな」
オムルは、最後に残っていたポテトを口に入れた。
「えー、Aランチもうないの?」
ないものはしょうがない。マーカー・クランは、Bランチのチケットを持って席に着いた。
「お前またサンドウィッチかよ」
ジョブ・ジョンは、妙な言い掛かりをつけられて口を尖らせた。
「いいじゃないか、好きなんだから」
「そんなのでよく力出るよな」
「大きなお世話だよ」
「ところでさ……」
マーカーは、辺りに注意しながら身を乗り出した。
「ガンダム、もう乗ったか?」
「の、乗れるわけないだろう!」
「お前、パイロット候補生じゃなかったのか?」
「そうだけど、あれは特別だよ」
「そうか、特別か……」
サンドウィッチを頬張るジョブを横目で見ながら、マーカーは物欲しそうに厨房を見遣った。
「あのガンダムってのはすごいぜ」
目を輝かせるオムルに、オスカは眼鏡を直して興味深げに話を聞いた。
「チーフメカマンの人に話聞いたんだけどさ、教育型コンピュータってのが凄いんだってさ」
「教育型?」
「戦っていくうちに、どんどん学習していって、モビルスーツ自身が戦い方を憶えるんだよ」
「へえ、そいつは凄いね」
「だろ? あんなの整備できたら、メカニック冥利に尽きるよな」
「ガンダムか……」
楽しそうに話すオムルを、オスカは羨ましく思った。ハイスクールの担任から、成績がいいからというだけで連邦軍士官学校を勧められ、何の疑いもなく従ってしまったオスカにとって、自分の指針となる目標が未だに見いだせずにいた。
「……なあ、オムル。僕達、戦争するのかな」
オムルは、怪訝そうな表情でトレイを片付けに立ち上がった。
「サイド7まであとどれくらいだ?」
ジョブは、その質問に口からはみ出たレタスを押し込んでから答えた。
「明後日には入港するって聞いてるけど」
「このまま、俺達も戦場に出るんだろうな」
「ああ、たぶんな」
「戦争か……」
マーカーは、やりきれないような溜息をついた。
「大丈夫さ、マーカー。ホワイトベースとあのガンダムがあれば、連邦は負けないよ」
ジョブは、まだ作業の途中だからと断って、席を立った。
「……勝つ、って言ってくれよな……」
みんな不安で一杯なのだろう。そんな状況でも、いざとなれば戦わなければならない現実が、すぐそこまで迫っている。みんなは、できればそのことに気づきたくないのだろう。
「Bランチ上がったよ」
「はい」
「はい、……あ」
背中合わせの二人は、お互いにパートナーとして一年戦争を共に戦うことを、まだ知る由もなかった。
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あとがき
一応補足しておきますと、マーカーとオムルというのは、WBの情報担当で、ブリッジで二人背中合わせで座っているんですね、上のほうで。
で、最初の出会いも、食堂で二人背中合わせだったという。
こらそこ、「あー」って言うな(笑
Posted by みかつう at 2005/06/21 (Tue) 22:55:55
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